高額介護サービス費はいくら戻る?上限額・申請方法を施設長が解説

高額介護サービス費|払いすぎた介護費は戻ってきます 費用

「介護サービスを増やしたら、毎月の支払いがどんどん高くなってきた」「役所から封筒が届いたけれど、何の書類かわからない」。

介護が長くなると、お金の心配はどうしても大きくなりますよね。

この記事では、介護歴20年の現役施設長が、高額介護サービス費という制度をわかりやすく解説します。

結論から言うと、1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えると、超えた分はあとから戻ってきます。一般的な世帯の上限は月44,400円です。

ただし、対象にならない費用や、申請の期限もあります。知らないまま損をしないように、一緒に確認していきましょう。

高額介護サービス費とは?払いすぎた介護費が戻る制度

高額介護サービス費は、介護保険サービスの1か月の自己負担(1〜3割の部分)が上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。

介護保険のサービスは、所得に応じて1割・2割・3割を自己負担します。サービスを多く使うほど、負担も増えていきます。

そこで、所得に応じて「1か月にここまで払えば十分」という上限が決められています。上限を超えた分は、申請すると市区町村から振り込まれます。

  • 対象になる人:要介護・要支援の認定を受けて、介護保険サービスを使っている人
  • 計算の単位:1か月ごと(1日〜末日)
  • 計算のまとまり:世帯ごと(同じ世帯で複数の人が使っていれば合算)

「高額」という名前から、特別な人のための制度に見えるかもしれません。ですが実際は、介護サービスを多く使う家庭なら、誰でも対象になりうる身近な制度です。

高額介護サービス費の上限額はいくら?【2026年時点】

上限額は、世帯の所得によって変わります。2026年9月時点の上限額(月額)は次のとおりです。

高額介護サービス費の所得区分ごとの上限額(月額)の図解
くわしく読む(文字で見る)
区分 上限額(月額)
課税所得690万円以上の世帯 140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満の世帯 93,000円(世帯)
住民税を払っている世帯(課税所得380万円未満) 44,400円(世帯)
住民税が非課税の世帯 24,600円(世帯)
住民税非課税で、年金収入などが82.65万円以下の人 24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護を受けている人など 15,000円(個人)

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)「サービスにかかる利用料」

多くのご家庭が当てはまるのは、「44,400円」か「24,600円」です。

「世帯」とは、住民票上の世帯のことです。「個人」の上限がある区分は、その人1人分の上限です。

「82.65万円」の基準は、2026年8月に80.9万円から見直されました。自分の区分がはっきりしないときは、市区町村の介護保険の窓口で確認できます。

高額介護サービス費でいくら戻る?計算例で解説

「結局、うちはいくら戻るの?」がいちばん気になるところですよね。よくある3つの例で計算してみます。

例1:同じ世帯の夫婦2人が介護サービスを使っている

  • 夫の自己負担:月30,000円
  • 妻の自己負担:月30,000円
  • 世帯の合計:月60,000円

住民税を払っている一般的な世帯なら、上限は44,400円です。

60,000円 − 44,400円 = 15,600円が戻ってきます。

1人ずつでは上限に届かなくても、同じ世帯なら合算して計算されるのがポイントです。

例2:2割負担の人が、要介護3で在宅サービスを多く使っている

要介護3の人が介護保険で使える量の上限(区分支給限度基準額)は、月27,048単位です。1単位はおよそ10円なので、約27万円分になります(地域によって少し変わります)。

これを上限いっぱいまで使った場合の自己負担は、次のとおりです。

  • 1割負担:約27,000円 → 上限44,400円に届かない
  • 2割負担:約54,000円 → 上限を約1万円超える

2割・3割負担の人は、1人でも上限を超えやすいことがわかります。

例3:住民税非課税の世帯で、1人が介護サービスを使っている

住民税非課税の世帯なら、上限は月24,600円です。

自己負担が月36,000円なら、36,000円 − 24,600円 = 11,400円が戻ってきます。

非課税の世帯は上限が低い分、1割負担でも対象になりやすいです。

同じ世帯の夫婦2人の自己負担を合算して15,600円が戻る計算例の図解

高額介護サービス費の対象外になる費用

ここはとても大事なところです。介護にかかったお金すべてが対象になるわけではありません。

次の費用は、高額介護サービス費の計算に入りません。

  • 施設やショートステイの食費
  • 施設の居住費(部屋代)・滞在費
  • 日常生活費(理美容代・日用品など)
  • 福祉用具の購入費
  • 住宅改修費
  • 介護保険の上限(区分支給限度基準額)を超えて使った分(全額自己負担の部分)
  • 介護保険外のサービス(自費のサービス)

有料老人ホームに入っている場合も同じです。介護サービス費の1〜3割の部分は対象ですが、家賃・管理費・食費などは対象外です。

施設の費用の内訳は、有料老人ホームの費用はいくら?内訳と軽減制度を施設長が解説で詳しくまとめています。

福祉用具の購入や住宅改修には、別の支給の仕組み(購入は年10万円まで、住宅改修は20万円まで、それぞれ1〜3割負担)があります。便利な道具の選び方は在宅介護の便利グッズまとめをご覧ください。

高額介護サービス費の申請方法と期限

申請書は市区町村から届くことが多い

多くの自治体では、対象になった人に市区町村から申請書(お知らせ)が郵送されます。届くのは、サービスを使った月から数か月後になることが多いです。

届いたら、振込先の口座などを書いて返送します。

一度申請すれば、次からは自動で振り込まれることが多い

多くの自治体では、一度申請すれば、その後に対象になった月の分は、登録した口座に自動で振り込まれます。

ただし、世帯の状況が変わったときなど、あらためて手続きが必要になることもあります。

申請の期限は2年

高額介護サービス費は、サービスを使った月の翌月1日から2年で時効になり、受け取れなくなります。

「なんの封筒かわからなくて、そのままにしていた」というのは、実はよくあることです。役所からの封筒は、一度中を確認してみてください。

手続きの細かいところは自治体によって違う

申請書の様式・届く時期・必要なものは、自治体によって異なります。わからないときは、ケアマネジャーか市区町村の介護保険の窓口に聞くと確実です。

高額介護サービス費の申請の流れ3ステップの図解

あわせて知りたい介護費の軽減制度

高額介護サービス費のほかにも、介護のお金を軽くする制度があります。

高額医療・高額介護合算制度(医療費と介護費の合計が高いとき)

1年間(8月〜翌年7月)の医療費と介護費の自己負担を合計して、上限を超えた分が戻る制度です。

70歳以上の場合、年間の上限は次のとおりです。

区分 年間の上限
一般(住民税を払っている世帯) 56万円
住民税非課税の世帯 31万円
住民税非課税で所得が一定以下の世帯 19万円

※収入の多い「現役並み所得」の世帯は、別の上限額になります。

通院や入院が多く、介護サービスも使っている家庭は、対象になることがあります。申請先は、加入している医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度など)の担当窓口です。手続きの方法は加入先によって異なるので、窓口で確認してください。

特定入所者介護サービス費(施設の食費・部屋代の軽減)

特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費と居住費は、所得と預貯金が一定以下なら軽くなる制度です。「負担限度額認定」とも呼ばれます。

高額介護サービス費の対象外だった食費・部屋代を補ってくれる制度なので、施設を考えている方は知っておくと安心です。

ただし、2026年8月から基準額や負担の上限額が見直されています。対象になるかどうかは、市区町村の窓口で確認してください。

施設の種類ごとの違いは、介護施設の種類まるわかりでも解説しています。

施設長の本音:届いた封筒を開けてみてほしい

施設で長く働いていると、ご家族からこんな声を聞くことがあります。

「そういえば、市役所から何か届いていたけど、よくわからなくて置いたままだった」。

一緒に中を見てみると、高額介護サービス費の申請書だった、ということが何度もありました。

介護が始まると、書類は本当にたくさん届きます。全部を理解しようとしなくて大丈夫です。

ただ、「お金が戻ってくる書類かもしれない」と知っているだけで、封を開けるきっかけになります。

また、ご夫婦2人とも介護サービスを使っている家庭や、2割負担の方は、思っている以上に上限を超えていることがあります。

わからない書類は、ケアマネジャーに見せてしまうのがいちばんの近道です。書類の説明も、ケアマネジャーの大切な仕事のひとつです。一人で抱え込まず、遠慮なく頼ってくださいね。

まとめ:高額介護サービス費は「知っているだけ」で損を防げる

  • 高額介護サービス費は、介護サービスの自己負担が月の上限を超えたとき、超えた分が戻る制度
  • 上限額は、一般的な世帯で月44,400円、住民税非課税の世帯で月24,600円
  • 同じ世帯なら夫婦の分も合算。2割・3割負担の人は1人でも超えやすい
  • 食費・部屋代・日常生活費・福祉用具の購入・住宅改修は対象外
  • 多くの自治体で申請書が届き、一度申請すれば次から自動で振り込まれることが多い
  • 2年たつと受け取れないので、届いた封筒は早めに確認を

まずは、この数か月に役所から届いた封筒がないか、確認してみてください。わからなければ、ケアマネジャーに相談すれば大丈夫です。

介護のお金は、一人で抱え込まなくていいんです。使える制度を上手に使って、無理のない介護を続けていきましょう。

よくある質問

Q. 高額介護サービス費は、いつ振り込まれますか?

A. 自治体によって異なりますが、サービスを使った月から数か月後に申請書が届き、申請後に振り込まれるのが一般的です。具体的な時期は、お住まいの市区町村にご確認ください。

Q. 世帯分離をしていると、夫婦で合算できませんか?

A. 高額介護サービス費は住民票上の世帯ごとに計算するため、世帯分離をしている場合は、それぞれ別の世帯として計算されます。どちらが有利かは所得などによって変わるので、市区町村の窓口やケアマネジャーに相談してみてください。

Q. 有料老人ホームに入っていても使えますか?

A. 介護サービス費(1〜3割)の部分は対象です。ただし、家賃・管理費・食費などは対象外です。有料老人ホームの費用の内訳は、有料老人ホームの費用はいくら?で解説しています。


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※本記事の制度・金額は2026年9月時点の情報です。制度は見直されることがあり、手続きは自治体によって異なります。最新の情報は、お住まいの市区町村にご確認ください。

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