介護保険でできないこと一覧|ヘルパーに頼めない家事と困ったときの補い方

介護保険でできないこと|施設長の介護ガイド 在宅介護

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「ヘルパーさんに頼んだら、それはできませんと言われた」「認定が出るまで、どうやって親を見ればいいの」。

介護が始まったばかりのころ、こうした壁にぶつかる方はとても多いです。

この記事では、介護歴20年の現役施設長が、介護保険でできないことを厚生労働省の通知をもとに一覧で整理します。

結論から言うと、まずは介護保険とケアマネジャーに相談し、それでも足りない部分を地域の支えや保険外サービスで補うのが、無理のない順番です。

できないことを知っておくと、「断られてどうしよう」と慌てずにすみます。一緒に見ていきましょう。

介護保険でできないこと一覧(ヘルパーに頼めない家事)

介護保険の訪問介護(ヘルパー)には、大きく分けて2つの種類があります。

  • 身体介護:食事・トイレ・入浴・着替えの手伝いなど、体に直接ふれる介助
  • 生活援助:本人の食事づくり・洗濯・掃除・買い物などの家事の手伝い

このうち、ヘルパーに「できません」と言われやすいのが生活援助(家事)です。

生活援助は、本人が自分でできなくなった家事を代わりに行うものとされています。そのため、次のような家事は一般的に介護保険の範囲に含まれません。

本人以外のための家事

  • 家族の分の洗濯・料理・買い物・布団干し
  • 本人が使っていない部屋の掃除(家族の部屋、共用の居間など)
  • 来客へのお茶出し・食事の用意
  • 自家用車の洗車・掃除

「ついでに家族の分も」は、介護保険では頼めません。ヘルパーさんが意地悪をしているわけではなく、制度のルールなのです。

暮らしに欠かせないとは言えないこと

  • 草むしり、花や植木の水やり
  • 犬の散歩などペットの世話

ヘルパーが行わなくても、日常生活に大きな支障は出ないと考えられている行為です。

普段の家事の範囲を超えること

  • 大掃除、窓ガラス磨き、床のワックスがけ
  • 家具や家電の移動、模様替え
  • 家の修理、ペンキ塗り、植木の剪定
  • おせち料理など、特別な手間をかける料理

同居の家族がいる場合の家事

介護保険の生活援助は、一人暮らしの方や、同居の家族が障害や病気などで家事をすることが難しい方を対象としています。そのため、同居の家族がいると、家事は家族ができると考えられ、認められにくくなります。

ただし、厚生労働省は、同居の家族がいるというだけで一律に利用できないわけではないとしています。障害や病気でなくても、次のような事情で家事が難しい場合は、利用できることがあります。

  • 家族が高齢で筋力が落ちていて、難しい家事がある
  • 家族が介護疲れで、共倒れのおそれがある
  • 家族が仕事で不在の時間に、やらないと生活に困る家事がある

同居していても事情がある方は、あきらめずにケアマネジャーに相談してみてください。

早見表:ヘルパーに頼めること・頼めないこと

ヘルパーに頼めること・頼めないことの早見表の図解
くわしく読む(文字で見る)
頼めることの例 頼めないことの例
料理 本人の食事づくり 家族の分の料理、おせちなど特別な料理
洗濯 本人の衣類の洗濯 家族の衣類の洗濯
掃除 本人の部屋・本人が使うトイレなど 家族の部屋、大掃除、窓ガラス磨き
買い物 本人の日用品・食材 家族のための買い物
その他 着替え・トイレ・入浴などの介助 ペットの世話、草むしり、模様替え、来客対応

※ここに挙げたのは国の通知にある一般的な例です。実際には、市区町村が本人の状況に合わせて判断します。迷ったらケアマネジャーに確認しましょう。

介護保険だけでは足りなくなりやすい3つの場面

「頼めない家事」のほかにも、介護保険だけでは手が足りなくなりやすい場面があります。現場でよく相談を受けるのは、次の3つです。

1. 申請から認定が出るまでの空白期間

介護保険は、申請してすぐに使えるわけではありません。「要介護認定」(どのくらい介護が必要かの判定)を受ける必要があります。

法律では、申請から原則30日以内に結果を出すことになっています。ところが実際には、全国平均で40.2日かかっており、30日以内に収まっている市町村はわずか5.6%です(厚生労働省の審議会資料、2022年度下半期のデータ)。

つまり、1か月以上待つことが珍しくないのです。

2. 退院直後の数日〜数週間

入院をきっかけに、急に介護が必要になる方は少なくありません。

退院の日は決まっているのに、認定やサービスの準備が間に合わない。家族が仕事を休んで対応するしかない。そんな声をよく耳にします。

3. 夜間や長時間の見守りが必要なとき

介護保険のサービスは、要介護度ごとに決まった月の上限額の範囲内で、ケアプランに沿って決められた時間・内容で行われます。

そのため、「夜中ずっとそばにいてほしい」「半日ついていてほしい」といった希望は、介護保険の枠だけでは収まらないことが多いです。

困ったときの補い方|まず介護保険、次に保険外

困ったときの補い方3つのステップの図解

では、足りない部分はどう補えばよいのでしょうか。おすすめは、次の3つのステップの順番で考えることです。

ステップ1:ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談する

まず相談したいのが、ケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)です。まだ決まっていない方は、お住まいの地域の地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)へ連絡しましょう。

たとえば、認定を待っている間でも「暫定ケアプラン」(仮の計画)を作って、先にサービスを使い始められる場合があります。認定の効力は申請した日までさかのぼるためです。

ただし、認定が想定より軽かった場合(「自立」と判定された場合を含む)、上限を超えた分は自己負担になることがあります。進め方は、ケアマネジャーとよく相談してください。

同居家族がいる場合の家事援助など、例外が認められる可能性がある相談も、まずはここからです。

ステップ2:地域の支えを探す

地域によっては、介護保険とは別に、比較的安い料金で家事を手伝ってくれる仕組みがあります。

  • 社会福祉協議会(社協)の有償ボランティアによる家事支援
  • シルバー人材センターの家事援助・草むしりなど
  • 市区町村独自の高齢者サービス(配食、見守りなど)

内容や料金、あるかどうかは地域によってまったく違います。地域包括支援センターで「このあたりで使えるものはありますか」と聞いてみてください。

ステップ3:民間の保険外サービスを使う

それでも足りないときに頼れるのが、全額自己負担の保険外(自費)の訪問介護です。

費用はかかりますが、介護保険のような「頼めること・頼めないこと」の制限が少なく、時間や内容を家族の希望に合わせやすいのが特徴です。介護保険のサービスと組み合わせて使うこともできます。

  • 申請中・認定待ちの期間のつなぎに
  • 退院直後の数日間だけ
  • 夜間の見守り・長時間の付き添い・通院の付き添い
  • 家族の分も含めた家事、ペットの世話
  • 家族が休みたい日だけのスポット利用

たとえば「イチロウ」は、24時間365日対応の保険外の訪問介護サービスです。最短で当日から利用でき、相談は無料です。

イチロウの主な料金(税込・2026年9月時点・公式サイトより)

項目 料金
日中(9時〜18時) 1時間 3,740円から
夜間(18時〜翌9時) 1時間 4,488円から
深夜パック(23時〜6時の7時間) 26,400円
最低利用時間 1回 2時間から
交通費 1回 990円
入会金などの初期費用 なし

※このほか、ヘルパーの指名料、月ごとの事務手数料、直前のキャンセル料などがかかる場合があります。最新の料金は公式サイトでご確認ください。

※ 対応エリアは、東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・兵庫・京都の一部地域に限られます(2026年9月時点)。お住まいの地域が対象かどうかは、問い合わせの際に確認できます。

エリア外の方は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに「自費で頼めるヘルパーはいますか」と聞いてみてください。地元の訪問介護事業所が、保険外のサービスを行っていることもあります。

保険外サービスを選ぶときに確認したいこと

保険外サービスは、事業者によって料金やルールがかなり違います。申し込む前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 最低利用時間:「2時間から」など、短時間では頼めないことが多い
  • 時間帯による料金の違い:夜間・早朝・当日の依頼は高くなりやすい
  • 交通費・手数料:1時間あたりの料金以外にかかる費用
  • キャンセル料:何日前までなら無料か
  • 頼める内容:医療的なケアが必要な場合は、看護師が対応できるか
  • 同じ人に来てもらえるか:認知症の方は、顔なじみのほうが安心しやすい

費用の目安として、日中に2時間頼むと、上のイチロウの例では「3,740円×2時間+交通費990円=8,470円」です。毎日使うと大きな金額になるので、「ここぞという場面に絞って使う」のが長続きのコツです。

施設長の本音

介護の相談を受けていると、「ヘルパーさんに断られて、どうしていいかわからなくなった」という声をよく聞きます。

訪問介護の現場で、特によく頼まれるのが次の3つです。

  • 庭の草引き
  • 犬や猫の世話
  • 配偶者(夫や妻)のご飯づくり

どれも、ご家族にとっては「ほんの少しのついで」に思えることばかりです。

たとえば、現場ではこんな場面によく出会います。

脳梗塞のあと、奥さまが要介護になったご夫婦。ご主人は80代で、これまで台所に立ったことがほとんどありませんでした。

ヘルパーさんが奥さまの昼食を作っていると、ご主人が申し訳なさそうに言います。「私の分も、同じものを少しだけ作ってもらえませんか」。

庭には、奥さまが大切にしてきた花壇があります。草が伸びてきたのを見て、「妻が気にしているので、草だけでも抜いてもらえませんか」。

縁側では、老犬が散歩を待っています。

ヘルパーさんは、心苦しそうに「ごめんなさい、それは介護保険ではできないんです」と伝えるしかありませんでした。ご主人は「そうか、そうだよな」と笑ってくれましたが、その背中はとても小さく見えました。

その後、ケアマネジャーと相談して、ご主人の食事は配食サービスを使うことにしました。草引きは地域のシルバー人材センターに、犬の散歩は近所に住む娘さんが週末に来て担当することになりました。

一つひとつは小さなことです。でも、その「小さなこと」が積み重なって、家族は追い詰められていくのだと、私は現場で何度も感じてきました。

「できません」と言われると、突き放されたように感じるかもしれません。でも、それはご家族が悪いわけでも、ヘルパーさんが冷たいわけでもありません。介護保険は、みんなで支え合うための制度です。だからこそ、使える範囲にルールがあります。

大切なのは、制度の外側にも助けがあると知っておくことです。

お金を払って人の手を借りることに、後ろめたさを感じる方もいます。けれど、家族が倒れてしまったら、介護そのものが続けられなくなります。人の手を借りることは手抜きではなく、介護を長く続けるための大切な工夫だと私は思っています。

そして、在宅での介護に限界を感じたら、それは家族の努力不足ではありません。状態が変われば、必要な支えも変わるのが当然です。施設という選択肢も含めて、一人で抱え込まずに考えていきましょう。

まとめ

  • 介護保険の生活援助(家事)は、本人ができない家事を代わりに行うもの。家族の分の家事、ペットの世話、大掃除、模様替えなどは一般的に頼めない
  • 同居家族がいる場合の家事援助は認められにくいが、家族の高齢・介護疲れ・仕事での不在などの事情があれば使えることもある
  • 認定は法律上30日以内だが、実際の全国平均は40.2日。申請中や退院直後は手が足りなくなりやすい
  • 困ったら、①ケアマネ・地域包括に相談 → ②地域の支え → ③保険外サービスの順番で考える
  • 保険外サービスは、ここぞという場面に絞って使うと、費用を抑えながら家族の負担を減らせる

できないことがあるのは、あなたのせいではありません。足りない部分は、頼れるものに頼っていいのです。

「この日だけでも誰かに来てほしい」と思ったら、まずは無料の相談で、どんな頼み方ができるか聞いてみるところから始めてみてください。

※対応エリアは、東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・兵庫・京都の一部地域です(2026年9月時点)。

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よくある質問

Q. 同居していても、ヘルパーに家事を頼めますか?

同居家族がいる場合、生活援助(家事)は認められにくくなります。ただし厚生労働省は、同居家族がいるというだけで一律に利用できないわけではないとしています。家族が障害や病気の場合のほか、高齢で難しい家事がある、介護疲れで共倒れのおそれがある、仕事で不在の間に必要な家事がある、といった場合は使えることがあります。まずはケアマネジャーに事情を伝えて相談してみてください。

Q. 保険外サービスに介護保険は使えますか?

保険外サービスは全額自己負担で、介護保険は使えません。ただし、介護保険のサービスと組み合わせて使うことはできます。「普段は介護保険、足りない日だけ保険外」という使い方をする方が多いです。

Q. 認定が出る前でも、介護サービスは使えますか?

認定の効力は申請した日までさかのぼるため、ケアマネジャーが暫定ケアプランを作れば、認定前から使い始められる場合があります。ただし、判定が想定より軽いと、上限を超えた分が自己負担になることがあります。申請と同時に、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するのがおすすめです。

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